空芯コイルを実測してみたら・・・
51mm径の紙パイプ( 紙管 )に巻いたコイルのQ値比較テスト

ゲルマニウム・ラジオなどの同調コイルを巻こうと考えていると・・・
どんな線材が良いのか、線材の違いで性能がどう変わるのか?
多くの人が疑問を持った事があるのではないかと思います。
手持ちの線材を使って、実際にコイルを巻いて測定してみました。

外径が同じ様なPEW / UEW単線とリッツ線で、線材の違いによるQ値を比較
一般的な密着巻きを基本にしています。
単線からリッツ線に変更するとQ値がかなり改善するのが確認できます。
リッツ線の本数が増えると、Q値が周波数によってどう変化するかが分かります。

測定結果の考察は各自でお願いします。



今回、比較した試料は下記の7種類です。

1,0.23Φ UEW線
2,
0.3Φ PEW線
3,0.45Φ UEW線
4,リッツ線 0.04mm 30本
5,
リッツ線 0.04mm 100本
6,リッツ線 0.04mm 200本
7,リッツ線 0.04mm 300本

この内、外径が近いのは以下の組み合わせ
0.23Φ UEW線とリッツ線 0.04mm 30本
0.45Φ UEW線とリッツ線 0.04mm 100本


測  定  開  始 !

最初にSANWA LCR700で100kHzレンジでインダクタンスが300μH付近になるように巻く。
※ピッタリ300μHには追い込んでいない。
備考:空芯コイルのテスト周波数10kHz,100kHzにおけるインダクタンス値は、500-2000kHzの周波数域での測定値とは
        大きくずれません。 
      但し、Q値は周波数により変化するので参考値になります。

  Q値を正確に測定するには、使用する測定器が実際に使用する周波数をカバーしているかどうかを確認してください。

その後、
500-2000kHzの範囲を ↓ で測定。


使用機材
HIOKI IM3536 LCRメーター 500 - 2000kHzに設定
テストフィクスチャ 9262

HIOKI IM3536 LCRメーターによるインダクタンス:Q値の周波数特性 実測データ
※500 - 2000kHzを1kHzステップで測定  印加電圧は0.5V一定です。
 CSVデータなので、Excelでグラフ化してください。

1,0.23Φ UEW線  →  0.23UEW.CSV
2,
0.3Φ PEW線  →  0.3PEW.CSV
3,0.45Φ UEW線  →  0.45UEW.CSV
4,リッツ線 0.04mm 30本  →   0.04X30.CSV
5,リッツ線 0.04mm 100本  →  0.04X100.CSV
6,リッツ線 0.04mm 200本  → 0.04X200.CSV
7,リッツ線 0.04mm 300本  →  0.04X300.CSV

※0.04mm 30本の外径は、 0.23ΦUEWと0.3ΦPEWの中間です。
※0.04mm 100本の外径は、0.45Φ UEWとほぼ同じです。

下記の5種類は、51mm径の紙パイプ( 紙管 )に巻いています。
表の見方    インダクタンス( μH ) / Q値の順に記載しています。
               ※インダクタンス、Q値共に小数点以下は切り捨て
※見やすくするために、実測データより50kHz毎の値を記載しています。


周波数 / kHz
0.23Φ UEW
0.04 X 30本
リッツ線
0.3Φ PEW 0.45Φ UEW
0.04 X 100本
リッツ線

500
303/132
300/131
337/59
319/24
310/205
550
303/137
300/143
337/63
319/27
310/235
600
304/141
300/154
338/65
319/32
310/253
650
304/144
300/164
338/68
319/38
310/276
700
304/147
300/174
338/68
320/43
310/297
750
305/148
301/183
339/70
320/47
310/313
800
305/149
301/189
339/81
320/51
311/329
850
305/149
301/201
339/83
320/59
311/332
900
306/149
302/208
340/89
320/64
311/348
950
306/150
302/213
340/91
321/70
311/343
1000
307/149
302/221
341/93
321/73
311/348
1050
307/145
303/214
341/93
321/77
312/342
1100
308/147
303/227
342/95
322/88
312/355
1150
308/148
303/236
342/97
322/97
312/370
1200
309/147
304/241
343/99
323/103
313/383
1250
310/145
304/247
343/100
323/106
313/393
1300
310/145
305/255
344/99
324/107
313/392
1350
311/143
305/257
345/102
324/111
314/428
1400
312/142
306/258
346/104
325/111
314/413
1450
312/140
306/255
346/103
325/111
314/398
1500
313/138
306/260
347/107
325/114
315/388
1550
314/136
307/241
348/108
326/115
315/389
1600
315/134
308/250
349/108
327/118
315/377
1650
316/132
308/251
350/109
327/119
316/377
1700
317/129
309/247
350/109
328/121
316/368
1750
318/127
309/244
351/109
329/120
317/376
1800
318/125
310/247
352/109
329/124
317/370
1850
320/124
311/247
353/110
330/123
318/368
1900
321/120
311/235
354/109
331/127
318/344
1950
322/118
312/228
356/108
331/125
319/342




次に、リッツ線だけの比較です。
素線径 0.04mmで、30本 100本 300本と本数が3倍から10倍になるとQ値はどう変化するのか?


200本、300本は51mm紙管では長さが足らないので、60mm径の塩ビパイプに巻いています。

表の見方    インダクタンス( μH ) / Q値の順に記載しています。
               ※インダクタンス、Q値共に小数点以下は切り捨て
※見やすくするために、実測データより50kHz毎の値を記載しています。


周波数 / kHz
0.04 X 30
0.04 X 100
0.04 X 200
0.04 X 300



500
300/131
310/205
366/576
338/704



550
300/143
310/235
366/698
339/659



600
300/154
310/253
367/766
339/728



650
300/164
310/276
367/818
339/854



700
300/174
310/297
367/867
339/958



750
301/183
310/313
367/915
339/973



800
301/189
311/329
367/958
340/865



850
301/201
311/332
367/959
340/1096



900
302/208
311/348
368/1038
340/1069



950
302/213
311/343
368/1041
340/1128



1000
302/221
311/348
368/1035
341/1121



1050
303/214
312/342
368/1160
341/941



1100
303/227
312/355
368/1150
341/975



1150
303/236
312/370
368/1227
342/1222



1200
304/241
313/383
368/1270
342/1134



1250
304/247
313/393
368/1315
342/1244



1300
305/255
313/392
368/1341
343/1092



1350
305/257
314/428
368/1570
343/1163



1400
306/258
314/413
369/1495
344/1342



1450
306/255
314/398
370/1624
344/1323



1500
306/260
315/388
370/1609
344/1137



1550
307/241
315/389
370/1639
345/1266



1600
308/250
315/377
370/1617
345/1102



1650
308/251
316/377
370/1539
346/1347



1700
309/247
316/368
371/1821
346/1037



1750
309/244
317/376
371/1773
347/1117


1800
310/247
317/370
371/1720
348/1238



1850
311/247
318/368
371/1859
348/1001



1900
311/235
318/344
372/1786
349/990



1950
312/228
319/342
372/1571
349/974



ボビンの外径:30本、100本は50Φ 200本、300本は60Φ 


30本が100本になるとQ値も1.5から3倍程度まで上がります。
30本が200本になるとQ値も4から7倍程度まで上がります。
30本が300本になるとQ値も5倍程度まで上がります。

空芯コイルとフェライトを使ったコイルを比較すると、フェライトの方は別の傾向が出て来ます。
フェライトの場合は透磁率により結果が大きく変わるので、コア材の選定は気を付けたいところ。
フェライト素材の詳細が不明な場合( メーカー資料が無い場合 )は実測して特性を把握するしか有りません。


リッツ線の外被を剥がして外観を比較した画像
左から、30本 100本 200本 300本の順です。


HIOKI IM3536を使用した有料測定サービスも出来ます。

ご希望の方はお問い合わせください。  info@mpl.jp

リッツ線も扱っています。 → http://bar-antenna.com/litz/litz.html



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