ゲルマニウム・ラジオ 虎ノ門


ゲルマニウム・ラジオは部品数が少なく簡単に製作できます。
簡単なラジオを作ってみよう、こんな簡単な回路なのに聞こえる! なんて軽いフレーズに乗せられて製作してみたものの・・・
ちっとも聞こえない、混信するなどで諦めた人も多いと思います。
ゲルマニウム・ラジオと言えば、簡単に出来上がるラジオだと甘く見ている人が多い様です。
夏休み等で子供たちとゲルマニウム・ラジオ製作教室を計画された方もいるでしょう。
簡単な回路 = 作るのも簡単 = 良く聞こえるではありません。
簡単な回路だからこそ、見直さないといけない箇所があります。

ゲルマニウム・ラジオは電源を使用しないので、増幅回路はありません。
電波の入り口である同調回路、ダイオードの選別、検波後の負荷抵抗、イヤホン( ヘッドホンなど )のインピーダンス
これら1つ1つの性能を最良点にして初めて高感度のゲルマニウム・ラジオが出来上がります。
この記事を見るだけでなく、実際に製作して動作を確認してもらいたいと思います。

MOSFET検波、LED検波とゲルマニウム・ラジオの応用版を紹介しましたが、今回は原点に戻って考えてみたいと思います。


製 作 編
ゲルマニウム・ラジオは部品数が少ないからこそ、1つ1つの部品を吟味し組み合わせて製作しないと高感度には仕上がりません。
ただ各自の受信環境は様々なので、1台で全ての環境に対応させるのは難しいかも判りません。
電界強度がある程度強い場所では外部アンテナ無しで聞こえ、弱い場合は外部アンテナで聞く事が出来る。
そんなゲルマニウム・ラジオの完成を目標とします。
基本的なラジオの動作を学ぶ最適な教材にもなります。
最近話題のワイヤレス電力伝送の基礎部分に通じるものがあり、電力伝送における高効率化のヒントになるかも判りません。

注:当然ですが、ゲルマニウム・ダイオードを使用したラジオをゲルマニウム・ラジオと呼んでいます。
感度が良いからとショットキー・ダイオードを使用すると、ゲルマニウム・ラジオではありません。
1N34 / 1N60の順方向電圧は0.3V程度ですが、ここでは0.17V程度のD311を使用しています。




上の黒いダイオードがロシア製 D311です。 
下は、ロシア製 D9B  

他のゲルマニウム・ダイオードと比較すれば、どれだけ凄いかが分かります。



D311・・濃い緑  1S426・・紫  1N60( WUXI XUYANG ELECTRONICS社製 秋月電子通商で販売中 )・・青
1N60( 東芝 )・・緑  D2ZH・・赤  OA1172・・茶  1S34・・水色

縦軸が電流、横軸が順方向電圧を示します。
0.5mAを流した時を比較してください。 0.17VとD311が段トツです。
順方向電圧が0.2Vでは、他のダイオードの3 - 4倍の電流が取り出せます。
つまり、より低い電圧から検波出来て取り出せる電流が多い事を意味しています。



教材用としても最適な性能比較テストセット



全 体 の 回 路 図
VC1:260PFポリ・バリコン   D1 - D3:ゲルマニウム・ダイオード 1N60 / 1N34等     C1:100PF  C2:2200PF       C3: 100PF
SW-A:1回路2接点  SW-B:2回路2接点  SW-C:2回路2接点  
SW-D:1回路6接点( 10kΩ - 100kΩ切換用 )   SW-E:1回路11接点( 8Ω - 100kΩ切換用 )

前面パネルのスイッチ等の位置は回路図に合わせて配置しているので、信号の流れが判りやすくなっています。

前面パネルのスイッチを切り換える事で、以下の動作が体験出来ます。
従来の1次コイルで検波する回路から、2次コイルで検波したり組み合わせを変えて動作が確認出来るテストセットです。

1,SW-Aは1次コイルの同調回路と検波部を直結にした場合、1次コイルの同調回路から独立した2次コイルと検波部が選択出来ます。
 近隣局との選択度特性、感度の差などを体験可能。
   応用例:テストセットではL2の位置は固定していますが、L2の位置を可変させる構造にすれば選択度特性等の理解がより深まると思います。
 TP1にオシロスコープを接続して中波帯の同調特性が確認出来ます。

2,SW−Bはゲルマニウム・ダイオードを1本使用した通常回路と倍電圧回路が選択出来ます。
 倍電圧回路にすれば本当に音が大きくなるか、選択度に変化があるか等の体験が出来ます。
 TP2にオシロスコープを接続すれば、検波後の音声出力が確認出来ます。
 また、この部分に直流電圧計を接続すれば簡易信号強度計になりますが、普通のアナログ・メーターでは内部抵抗があまり大きく無いので
 なるべく大きな物を選ぶか、デジタル・テスターを使用してください。

3,SW-Cは検波後にセラミック・イヤホンを直結するか、負荷抵抗を選択出来ます。
 SW-Dで負荷インピーダンスを10kΩから100kΩまで6段階の選択が出 来ます。
 セラミック・イヤホンを直結した場合と。マルチタップ・トランスを使用した場合の聞き比べが出来ます。
 同時にSW-Eを聞きやすい適切なインピーダンスに設定が出来る。



小型化して、持ち運びが楽になった2号機




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● 同調コイルについて
同調コイルは製作しやすいバー・アンテナにしていますが、各自の好みでアレンジしてください。
色んなタイプの同調コイルを試す場合は、最初からターミナルを取り付けて配線すると良いでしょう。

フェライト・ロッド 140 X 10mm  10本  5本束を2組にして、長さ280mmにしています。
L1 1次側:0.06 X 360本 または 0.08 X 235本
L2 2次側:0.04 X 100本
L3 アンテナ・リンク用:0.04 X 100本 L1側に5回

今まで180 X10mm 5本で試していましたが、このバー・アンテナは更に大きな音が出ます。

● 考察
考察としていますが、結果や説明を長く書いた処で見た側がそれだけで分かったつもりになるのは残念です。
ぜひ一度同じ物を製作して各自で比較してください。

ここではタップがたくさんあるトランスを使用していますが、欲を言えばこんなトランスが出来ればと考えています。
インピーダンスが300Ωから10kΩといきなり大きくなるので、1kΩ 2kΩ 5kΩ 7kΩなど中間のタップがいくつか欲しい。
巻き線をもう少し細くして、直流抵抗を増やした物が欲しい。
近々、これに近いトランスで試したいと考えています。



4Ω - 200kΩ マルチタップ・トランスを使用した製作例


マッチング・トランスとロータリー・スイッチを使用した製作例
バー・アンテナ 180X10mmフェライト・ロッド 3本

検波後の負荷抵抗は、
1.5kΩ - 2.5kΩ - 5kΩ - 10kΩ - 20kΩ - 40kΩ - 100kΩ - 200kΩと8通りを選択可能。
レシーバー側は4Ωから200kΩまでを可変出来るので、最適な状態で受信が楽しめます。
この後、検波電流を見る為に電流計端子を追加しています。

アナログ・メーターでは分流器を併用すると微妙に状態が変わるので、マルチメーターの
電流計レンジを使います。 これだと全レンジで抵抗値が低く( 100Ω )一定なので使いやすいです。
秋葉原ラジオデパート某店で¥108で購入



メーターを使用しない時は、赤黒端子をショート



NHK第一 76.5μA     ¥108のマルチメーターで



AFN  159μA

 

ダイオードは、8種類を切り換え出来ます。
1-1N34 2-1N34A 3-1N34A 4-CV-448
5-1N38B 6-D311 7-SD60 8-1N60

その日の気分により、ダイオードを切り換えて楽しめます。




アンテナ・カプラーはコイルを左右に動く様にして結合度を加減します。

2016-08-26追記 更に高性能なマルチタップ・トランス MCL MT-4200K で新感覚の感度に!
17通りのタップがあるトランスで試した処、100kΩまでのトランスに比べて全然違うと感じました。
4Ω - 8Ω -16Ω - 32Ω - 64Ω - 150Ω - 300Ω - 500Ω - 800Ω - 1.5KΩ - 2.5KΩ - 5.0KΩ - 10KΩ - 20KΩ - 40KΩ - 100KΩ - 200KΩと
広範囲に切り換え可能に加え、大きく変わったのは直流抵抗です。
出力トランスと言うとインピーダンスが云々と話が出ますが、直流抵抗も重要になります。
同じ100kΩのタップでは旧型トランスが680Ω程度に対し3倍の2.04kΩ、200kΩでは3.5kΩ程あり誘起電圧も大きくなり
無電源ラジオに使用する最終トランスと言えます。 この下に製作参考記事があります。

外部アンテナを使用する場合の結合用コイルを設けています。
更に感度を良くしたい場合には、同調式バー・アンテナを併用しています。
復同調になるので、コイルのQ値が高まり感度は向上します。
ただ同調させるのに、少しコツが要ります。



自 宅 で 使 用 して い る ラ ジ オ

ゲルマニウム・ラジオ と 現代版・鉱石ラジオを合体!
計 2 4 種 類 + α  の 検 波 デ バ イ ス を 体 験 出 来 る !








完 成 し た 画 像
前面は厚さ3mmのアクリル板を穴明け加工に出して

主 な 特 徴

ゲルマニウム・ラジオは、ダイオードは22種類を切り換えて使用可能
現代版・鉱石ラジオの検波デバイスは、USBデバイスとゲームソフトのいずれかを使用
注:USBデバイスはキーボードやマウス等 各種試せます。
              ゲーム・ソフトは任天堂ファミコン用なら何でも試せます。

性能比較テストセットとしても使用出来ます。
A:検波ダイオードの接続箇所の違いによる感度、分離の比較
1次コイルで同調、ダイオード直結にした場合
    1次コイルは同調のみ、2次コイルでダイオードに接続

B:検波後のトランスの有無による音量・音質の比較
ダイオードで検波後、直接セラミック・イヤホンに接続した場合
検波後、マルチタップ・トランスに接続した場合

検波するダイオードの検波電流とトランスの端子間電圧をモニター出来ます。
各ダイオードの感度を比較するのも容易に出来ます。
無電源ラジオの製作会の講師陣向けに事前体験用ラジオとしても最適です。

ダイオードは、24種類を切り換え出来ます。
ダイオードは大きいので、幅広の平ラグ板に半田付け2段重ねで配置。
切り換え用ロータリーSWは23接点なので、ダイオードは22種類と
23番目の位置はUSBデバイスとゲーム・ソフトを並列接続しています。
どちらかを挿す事で合計24種類になります。
但し、ゲームソフトとUSBデバイスはかなりの種類があるので実際は更に増えます。
なかなか見かけないゲルマニウム・ダイオードを多く使用しています。
各ダイオードの感度差、音質の違い等が体感出来ます。



BANK - A  左より、1 - 1N34 2 - 1N34A 3 - 1N38B 4 - 1N54 5 - 1N65 6 - 1N81

BANK - Aの順方向特性



BANK - B  左より、7 - CV448 8 - GEX34 9 - GEX54 10 - 1N60 11 - D18 12 - D311



BANK - Bの順方向特性




BANK - C  左より、13 - D2ZH 14 - D9B 15 - 1T22 16 - 1S34 17 - SD60 18 - OA91


BANK - Cの順方向特性


BANK - D  左より、 19 - ECG109 20 - 1S188AM1 21 - OA1172 22 - 1S198 23 - 24 - USBデバイス / ゲームソフト

BANK - Dの順方向特性



簡易アンテナ・カプラー用コイル
グラグラしない様に、立てラグ板で固定
アンテナの性能に合わせ、1回毎にタップを切り換えて最適値を探します。
1.6Φスズメッキ線で巻いています。


大 き め の バ ー・ア ン テ ナ
竹製板( 320 X 210mm )の大きさに合わせて、バー・アンテナを取り付けます。
140 X 10mmフェライト・ロッドを10本使用
1次コイル:0.04 X 300本  2次コイル:0.04 X 100本









検波電流と検波出力電圧の両方をモニター出来ます。
電流計はアナログが見やすくて良いけれど、メーターが振り切った場合は分流器を併用する為に内部抵抗が変化します。
なるべく変化幅を少なくする様に、内部抵抗100Ωのパネルメーターを使用しています。
199.9μA/1999μAと199.9mV/1999mVのレンジは自動切り換えなので、便利です。
このパネルメーターだけは無電源に出来ないので、単三電池2本を使います。
電流計は電池切れになっても、内部抵抗100Ωは有効なので動作には支障無し。











街 で 持 ち 歩 く 為 の ゲ ル マ ニ ウ ム ・ ラ ジ オ



Magical Stick Giant  685.8 X 25.4mmのバー・アンテナ  ゲルマニウム・ラジオにも同調型バー・アンテナの応用も




肩掛けベルトで持ち運びも楽々!

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東京・晴海にある海員会館5Fでニッポン放送/1242kHz、RF日本/1422kHzが大きな音で聞こえました。

フェライト・ロッド 180 X 10mm  10本 全長:360mm
1次コイル:0.08 X 235本  2次コイル:0.04 X 300本
重さ:1050グラム

回路構成:1次コイル + 260PFポリ・バリコンで同調
       2次コイル + D311ゲルマニウム・ダイオードで検波
検波出力はST-30( 1:2  12.5kΩ:50kΩ )相当トランスの12.5kΩタップに接続、50kΩ側をセラミック・イヤホンに。
屋外で使用する場合はイヤホンを並列 または 直列接続にすれば騒音からある程度逃れられます。
但し、後ろから傍若無人に寄って来る自転車等には細心の注意が必要です。



秋葉原・東京ラジオ・デパート前でNHK-1,NHK-2,AFNが聞こえます。 駅前のダイビル周辺では大きな音で聞く事が出来ます。
2015年9月10日現在、外部アンテナとしても使える様に改造しています。

ベルトを掛けて持ち歩いたり、使わない時はどこかに引っ掛ける事が出来ます。



た ん ぱ ゲ ル マ ニ ウ ム・ラ ジ オ

受信周波数:


外部アンテナを使うのを前提に100 X 100mmの木板上に組み立てました。


回路図は至って普通で、中波帯用と変わりません。

バー・アンテナは100 X 10mmのフェライト・ロッドに巻いて、インダクタンスは約11μHあります。
260PFポリ・バリコンで主同調、サブ同調用に並列に3.75PF( 10PFエア・バリコンに6PFを直列接続 )を接続しています。



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